Bachelier Model

### 概要 バシュリエモデルは、フランスの数学者ルイ・バシュリエが1900年の博士論文「投機理論」において提唱した、株価などの資産価格変動を記述するための確率過程モデルです。オプション価格理論の数学的基礎を築いた先駆的な業績とされています。 ### モデルの仮定 このモデルの核心的な仮定は、資産価格の変動（差分）が**正規分布**に従う、すなわち価格プロセスが**算術ブラウン運動（Arithmetic Brownian Motion）**に従うとする点です。 - dS = μ dt + σ dW （dS: 価格の微小変化, μ: ドリフト項, σ: ボラティリティ, dW: ウィーナー過程） ### 特徴と限界 - **先駆性:** オプション価格を数学的に評価しようとした最初の試みの一つです。 - **株価の負値:** 算術ブラウン運動を仮定するため、モデル上、株価がマイナスになる確率がゼロではありません。これは現実の株価と矛盾します。 - **ボラティリティの仮定:** ボラティリティσが価格水準によらず一定であると仮定しています。 ### ブラック・ショールズモデルとの比較 後に登場したブラック・ショールズモデルは、価格の「対数リターン」が正規分布（幾何ブラウン運動）に従うと仮定し、価格が常に正であることを保証しました。 バシュリエモデルは現代の標準的な評価ではあまり使われませんが、その歴史的な意義は大きいです。