CBAM

### 概要 炭素国境調整措置（Carbon Border Adjustment Mechanism, CBAM）とは、国内で厳しい気候変動対策を実施している国・地域が、対策が不十分な国・地域から製品を輸入する際に、その製品の製造過程で排出されたと推計される炭素量に基づき、国境で価格調整（事実上の課金）を行う仕組みです。「炭素国境税」や「国境炭素調整」などと呼ばれることもあります。 ### 目的 1. **カーボンリーケージ（炭素漏洩）の防止:** 国内の厳しい排出規制を嫌って生産拠点が国外へ移転したり、輸入品に代替されたりすることで、世界の総排出量が減少しない事態を防ぎます。 2. **公平な競争条件の確保:** 国内製造業者と、炭素コストを負担していない輸入品との間の競争条件を公平にすることを目指します。 ### EU CBAMの仕組み（例） EUが先行導入を進めており、対象品目（鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム等）の輸入者に対し、輸入品の排出量に応じた「CBAM証書」の購入・提出を義務付けています。証書価格はEU ETSの排出枠価格に連動し、輸入品にも実質的な炭素コスト負担を求めます（輸出国で支払済みの炭素価格は控除される仕組みあり）。 ### 課題と論点 - **WTOルールとの整合性:** 保護主義的な貿易障壁と見なされないかが議論されています。 - **排出量の算定:** 輸入品の製造時排出量を正確に算定・検証する方法が課題です。 - **途上国への影響:** 途上国の輸出産業への影響や支援策の必要性が論点です。 CBAMは、気候変動対策と国際貿易ルールが交差する新たな政策手段として注目されています。