Convenience Yield

### 概要 便宜収益（Convenience Yield、コンビニエンス・イールド）とは、コモディティ（商品）の現物を在庫として保有することから生じる、金銭的なキャッシュフロー以外の便益や有利さを指す概念です。この便益があるために、現物保有者は（金利や保管コストを考慮してもなお）現物を手放さずに保有し続けるインセンティブを持つことがあります。 ### 具体的な便益 - **生産・操業の継続:** 原材料の在庫を持つことで、市場での一時的な供給不足や価格急騰が発生した場合でも、生産活動や事業運営を中断することなく継続できます。 - **機会損失の回避:** 需要が急増した際に、在庫があれば即座に対応でき、販売機会を逃すことを避けられます。 - **柔軟性の確保:** 市場の状況に応じて、有利なタイミングで販売または使用する選択肢を保持できます。 ### 先物価格との関係 便宜収益は、現物価格と先物価格の関係（ベーシス）や、先物価格の期間構造（コンタンゴ/バックワーデーション）を説明する上で考慮される要素です。 一般的に、現物の貯蔵コスト（金利＋保管費用）を考慮すると、先物価格は現物価格よりも高くなるはずです（キャリーコスト・モデル）。しかし、便宜収益が高い（＝現物保有のメリットが大きい）と市場参加者が認識している場合、現物が相対的に割高となり、先物価格が現物価格を下回る「バックワーデーション（逆鞘）」が発生しやすくなります。 便宜収益の大きさは、その商品の在庫水準（低いほど便宜収益は高まる傾向）や需給の逼迫度合いによって変動すると考えられています。 便宜収益は直接観測・測定することは困難ですが、商品市場の価格形成を理解する上で重要な概念です。