Emissions Trading System

### 概要 排出量取引制度（Emissions Trading System, ETS）とは、温室効果ガス（GHG）やその他の大気汚染物質の排出量を、経済的インセンティブを用いて削減することを目的とした市場ベースの政策手段です。排出許可量（排出枠）や排出削減量（クレジット）に価値を与え、市場で取引可能にすることで、コスト効率の良い排出削減を促します。 ### 主な方式 - **キャップアンドトレード (Cap and Trade):** - 政府等が排出総量上限（キャップ）を設定し、排出枠（アロワンス）を企業等に配分します。 - 排出枠の過不足分を市場で売買できます。 - 排出総量が確実に抑制される一方、市場価格（炭素価格）は変動します。EU ETSなどが代表例です。 - **ベースラインアンドクレジット (Baseline and Credit):** - 各排出主体に排出量の基準値（ベースライン）を設定します。 - ベースラインより削減できた場合にクレジットが発行され、売却できます。 - キャップは設定されず、排出総量の保証はありませんが、導入が比較的容易な場合があります。 ### 目的と効果 - **コスト効率的な排出削減:** 削減コストが低い主体が多く削減し、高い主体は枠やクレジットを購入することで、社会全体で最も低いコストでの削減を目指します。 - **技術革新の促進:** 排出枠やクレジットの価格（炭素価格）が、排出削減技術へのインセンティブとなります。 - **柔軟性の確保:** 各主体が自社の状況に応じて削減か取引かを選択できます。 ### 導入例と課題 EU、米国（カリフォルニア州等）、中国、韓国、日本（東京都等）など世界各地で導入・検討されています。課題は、キャップ設定、配分方法、国際連携、価格安定性などです。 ETSは、カーボンプライシングを実現する有力な政策ツールの一つです。