Overlay Strategy

### 概要 オーバーレイ戦略（Overlay Strategy）とは、年金基金や機関投資家などが、保有している主要な資産ポートフォリオ（コアポートフォリオ、例: グローバル株式や債券）の基本的な構成や長期的なアセットアロケーションは維持したまま、そのポートフォリオ全体に対して、先物、オプション、スワップといったデリバティブ取引を「重ねて（Overlay）」実施することにより、特定の目的を達成しようとする運用戦略・手法の総称です。 ### 主な目的と種類 - **リスク管理オーバーレイ:** - **為替オーバーレイ (Currency Overlay):** 外国資産への投資に伴う為替変動リスクを、為替先物や通貨オプションなどを用いてヘッジまたは管理します。 - **金利オーバーレイ (Interest Rate Overlay):** ポートフォリオ全体が持つ金利変動リスク（デュレーション）を、金利先物や金利スワップなどを用いて調整します。 - **エクイティ・オーバーレイ (Equity Overlay):** 一時的な市場下落リスクに備えて株価指数先物を売ったり、プットオプションを買ったりして、ポートフォリオ全体のエクイティエクスポージャーを調整します。 - **リターン向上オーバーレイ (Return Enhancement / Alpha Overlay):** - コアポートフォリオとは独立した短期的な市場予測や裁定取引の機会に基づき、デリバティブを用いて追加的なリターン（アルファ）を追求します。 - **その他の目的:** ポートフォリオのリバランスをデリバティブで効率的に行う場合など。 ### 特徴と利点 - **コアポートフォリオの維持:** 既存の資産運用マネージャーや長期的な戦略を変更することなく、特定の目的（リスク管理、リターン向上）に特化した運用を追加できます。 - **効率性:** デリバティブを利用するため、現物資産を売買するよりも少ない資金で、また迅速にエクスポージャーを調整できる場合があります。 - **専門性の活用:** 為替や金利など、特定の分野に専門性を持つ外部のオーバーレイ・マネージャーに運用を委託することが多いです。 ### 注意点 - デリバティブ取引に伴うリスク（カウンターパーティリスク、流動性リスク、レバレッジリスクなど）が存在します。 - オーバーレイ戦略自体のパフォーマンスがマイナスになる可能性もあります。 - コアポートフォリオの運用者とオーバーレイ・マネージャーとの連携や情報共有が必要です。 オーバーレイ戦略は、大規模なポートフォリオを効率的に管理・調整するための高度な運用手法の一つです。