SCC (Social Cost of Carbon)

### 概要 炭素の社会的費用（Social Cost of Carbon, SCC）とは、二酸化炭素（CO2）を現在新たに1トン排出することによって、将来の気候変動を通じて、農業、人の健康、物的損害、生態系サービスなど、社会全体が長期にわたって被るであろう追加的な損害額（コスト）を、経済学的なモデルを用いて推計し、現在価値に割り引いたものです。 ### 目的と計算 SCCは、CO2排出という「外部不経済」を貨幣価値で定量化しようとする試みです。 計算には、CO2排出シナリオ、気候モデル、損害関数、割引率などを用いた複雑な統合評価モデル（IAM）が使われます。モデルや仮定（特に割引率）によって推計値は大きく変動します。 ### 利用場面 - **政策評価:** 気候変動対策を実施する便益（損害回避額＝SCC×削減量）とコストを比較衡量（費用便益分析）するために利用されます。 - **カーボンプライシングの水準設定:** 理論的には、炭素税率などをSCCに近づけることで外部コストを内部化できると考えられます。 - **企業の投資判断:** 企業が排出量の社会的コストを考慮したり、低炭素投資の価値を評価したりする際の参照値（内部炭素価格）として用いられることがあります。 ### 注意点 SCC推計値は科学的・経済的な不確実性や倫理的な問題（割引率設定など）を含むため、その値や利用方法には様々な議論があります。しかし、CO2排出の社会的コストを政策決定等に反映させる概念として参照されています。