Binomial Model

### 概要 二項モデル（Binomial Model）は、特にオプションの価格評価に用いられる、離散時間型の数理モデルです。Cox, Ross, Rubinstein (1979) によってオプション評価に応用されたものが有名です。満期までの期間を多数の短い小区間に分割し、各区間の終わりに原資産価格が上昇(u倍)または下落(d倍)するかの二通りの動きしかしないと仮定します。 ### 仕組み（二項格子） 1. 満期までの期間をN個の小区間に分割します。 2. 各時点において、原資産価格Sが次の時点では確率pでu倍に上昇（Su）、確率(1-p)でd倍に下落（Sd）すると仮定します。 3. これにより、原資産価格の取りうる経路が格子状（ツリー状）に表現されます。 4. 満期時点における各ノードでのオプションのペイオフを計算します。 5. 満期の一つ前の時点に戻り、各ノードでのオプション価格を、次の時点の二つの可能なオプション価格の期待値をリスク中立確率で割り引いて計算します。 6. このプロセスを契約時点（現在）まで逆向きに繰り返すことで、現在のオプション価格を求めます。 ### 特徴と利用 - **直感的理解:** 離散的な価格変動を仮定するため、連続時間モデルよりも理解しやすいです。 - **アメリカンオプション評価:** 各時点で権利行使の可否を判断できるため、アメリカンオプションの評価にも容易に適用できます。 - **柔軟性:** 配当や早期行使条件など、複雑なオプション評価にも拡張可能です。 - **ブラック・ショールズモデルへの収束:** 分割数Nを増やすと、特定の条件下でブラック・ショールズモデルの解に収束します。 二項モデルは、オプション評価の教育的な側面や、アメリカンオプション等の評価において利用されています。